阪大物理'26年前期[1]

ばねによって天井からつるされた小球の運動について考える。ただし、小球の大きさ、ばねの質量、および空気抵抗は無視できるものとする。また、ばねはフックの法則の成り立つ範囲で伸び縮みし、小球は天井にぶつかることはなかったものとする。重力加速度の大きさをとする。

T.図1のように、小球がばねによって天井からつるされていた。ここで、ばねの自然の長さは,ばね定数はαである。 また、小球の質量はmである。

1 小球が運動せずに静止しているときのばねの長さlを求めよ。
2 運動せずに静止していた小球を、鉛直下向きに引いてから静かにはなしたところ、小球は振幅Hの単振動を始めた。この単振動の周期を求めよ。
3 問2の単振動において、小球が最も高い位置にあるときのばねの弾性力による位置エネルギーを,小球が最も低い位置にあるときのばねの弾性力による位置エネルギーをとする。mαHから必要なものを用いて表せ。

U.これ以降、T.の小球は質量mに加えて、電気量q()をもつものとする。図2のように、T.の状況に加えて、それぞれ電気量()をもち、大きさの無視できる、粒子Aと粒子Bを固定した。ここで、鉛直上向きを正の向きとするx軸をとり、天井から鉛直下向きにだけ離れている位置をとする。粒子Aと粒子Bは、の水平線上にあり、かつ、ばねが天井に固定された点を通る鉛直方向の直線から、左右に距離Lだけ離れていた。
小球は水平方向には動かず、鉛直方向に運動をしていた。以降、小球の位置をx座標で表す。クーロンの法則の比例定数をkとする。

4 小球が位置xにあるとき、小球が粒子Aおよび粒子Bから受ける静電気力の合力のx成分を求めよ。ただし、の正の向きは、x軸の正の向きにとる。
5 以降の設問において、小球の位置をxとすると、小球はLよりも十分に小さい範囲で運動していたものとする。小球が位置xにあるとき、問4の結果を用いると、小球にはたらく全ての力の合力のx成分はと書ける。βαmkLqQから必要なものを用いてそれぞれ表せ。ただし、Fの正の向きは、x軸の正の向きにとる。また、Lより十分に大きいことから、と近似すること。
6 のときの小球の振動周期は、問2の単振動の周期倍であった。また、のときの小球の振動周期は、問2の単振動の周期倍であった。このとき、を用いて表せ。
7 位置()まで鉛直上向きに小球を持ち上げた後、時刻で静かにはなした。その後、小球がはじめてを通過する時刻をとする。時刻 における小球の速さvを、2通りの方法で求めてみよう。以下の文章中の (a)  (d) に入るべき式を、それぞれの空欄中に与えられた文字のうち必要なものを用いて表せ。

【方法1 5より、小球の運動方程式は、ばね定数βのばねからの弾性力のみを受けて単振動する小球の運動方程式と同じである。すると、この単振動におけるエネルギー保存則から、 (a) {mβ} と求められる。
【方法
2 ばね定数αのばねの弾性力、重力、静電気力、それぞれについての位置エネルギーを計算し、エネルギー保存則に基づいてvを求めることもできる。まず、時刻におけるばねの弾性力による位置エネルギーから、時刻におけるばねの弾性力による位置エネルギーを引いて得られる差は (b) {α} である。次に、時刻における重力による位置エネルギーから、時刻における重力による位置エネルギーを引いて得られる差は (c) {m} である。そして、時刻における小球にはたらく静電気力による位置エネルギーから、時刻における小球にはたらく静電気力による位置エネルギーを引いて得られる差は (d) {kqQL} である。ただし、ここでは、Lより十分に大きいときに、と近似できることを用いた。以上より、時刻における小球の運動エネルギーは (b)  (c)  (d) である。これをもとに求めた速さvは、【方法1】で求めたvと一致する。

8 粒子Aと粒子Bの電気量を瞬間的に切り替えられるものとする。いま、位置()まで鉛直上向きに小球を持ち上げた後、時刻で静かにはなした。その後、小球がはじめてを通過した瞬間に、粒子Aと粒子Bの電気量をからQに切り替えた。それから小球は最下点に到達した後に上昇に転じ、ふたたび小球がを通過した瞬間に、粒子Aと粒子Bの電気量をQからに切り替えた。小球の位置の時間変化を表すグラフとして最も適切なものを、図3()()から1つ選んで記号で答えよ。
ただし、電気量を切り替える瞬間の前後において、小球の速度は同じであるものとする。また、粒子Aと粒子Bの電気量がQのときとのとき、どちらについてもそれぞれ、小球の運動は単振動とみなせるものとする。

V.図4のように、U.の状況に加えて、さらに電気量()をもつ質量mの小球を、自然の長さ,ばね定数αの同じばねで、U.で考えた小球から鉛直方向につりさげた。 そして2つの小球を鉛直下向きに引いて、静かにはなした。すると2つの小球が、小球間の距離を一定に保ちつつ、鉛直方向にそれぞれ単振動をする運動が実現された。この運動について考える。
ここで、U,と同様に、天井から鉛直下向きにだけ離れている位置をとする。上側の小球の位置を,下側の小球の位置をとすると, 小球はおよびLよりも十分に小さい範囲で運動したものとする。そのため、各小球の運動方程式において、問5と同様におよびと近似してよい。

9 小球の振動周期mα,および問5βのうち、必要なものを用いて表せ。
10 αkqQLを用いて表せ。



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解答 単振動の問題ですが、静電気力も絡んでいてボリューム満点です。難問とは言えないのですが、問8はカンで選ぶとしてもきちんとした議論は複雑、時間的に最後の問9,問10は無理です。

T.問1 小球が静止しているときの小球に働く、重力ばねの弾性力つり合いより、
 ∴ ......[]

2 振動端にいるときの小球の(重力+弾性力の)位置エネルギー,振動中心にいるとき、小球の速さをとして小球の運動エネルギー力学的エネルギー保存より、両者は等しく、

角振動数ω,振幅A単振動の公式より、単振動の角振動数ωは、,単振動の周期は、 ......[]

3 最も高い位置は単振動の振動端でばねが最も縮んだ位置です。ばねは、つり合いの位置(振動中心)よりもHだけ縮んで、問1よりつり合いの位置でのばねの伸びはで、最も高い位置ではばねはつり合いの位置よりもHだけ縮んで、ばねの伸び(縮み)です。最も低い位置は逆の振動端でばねが最も伸びた位置です。ばねは、つり合いの位置よりもHだけ伸びて、ばねの伸びはです。より、
......[]

U.小球の位置がxのときの小球と粒子A,粒子Bとの距離はであり、小球と粒子A、小球と粒子Bの間には、同じ大きさの静電気力(引力)が働きます。引力の向きが水平方向となす角をθとすると、です。

4 小球と粒子Aの間に働く力と、小球と粒子Bの間に働く力の合力は、鉛直下向きで、合力のx成分は、小球と粒子Aの間に働く力のx成分の2倍で、
......[]

5 と近似すると、問4は、となり、,重力、ばねの弾性力(ばねの伸びはx)の合力Fは、
問題文のと見比べて、
......[]

6 問5より小球の加速度をaとして、運動方程式はとなりますが、小球は、角振動数
 ・・・@
の単振動をします。のときの角振動数は、,このときの単振動の周期は、
 ・・・A
のときの角振動数は、,このときの単振動の周期は、
 ・・・B
B÷Aより、,よって、


 ・・・C
2の結果とAより、




 ・・・D
C,Dより、

 ∴ ......[]

7 小球は、において振動端にいます。となるつり合いの位置においてですが、この位置は振動中心です。弾性力+重力の位置エネルギーは、振動中心で0,振動端で,小球の運動エネルギーは、振動中心で,振動端で0です。力学的エネルギー保存より、
 ・・・E
より、 ......[(a)]
弾性力の位置エネルギーの基準は自然長の位置なので、にける弾性力による位置エネルギーはにおける弾性力による位置エネルギーは,弾性力による位置エネルギーの差は、
......[(b)]
重力による位置エネルギーの差は、 ......[(c)]
のときの粒子Aと小球との距離は,問題文の近似式を用いて、静電気力による位置エネルギーのときの粒子Aと小球との距離は,静電気力による位置エネルギーは,粒子Bについても粒子Aと同じで、静電気力による位置エネルギー差は、粒子A,粒子B合わせて、

......[(d)]
5の結果を用いると、,また、より、であって、(b)(c)(d)は、

 ( )
となり、Eと同じ結果が得られます。

8 小球がを通過した瞬間()に粒子Aと粒子Bの電気量をからQに切り替えると、問6のときと比べて静電気力が等大逆向きとなり、,新たなつり合いの位置を,小球の加速度をとして、その後の小球の運動方程式は、となり、小球は角振動数の単振動に移行します。
5と比べると、なので、,であって、単振動の周期は、となり周期が長くなります。
をはじめて通過した瞬間の小球の速さは、問
7vであり、です。これ以降単振動して再度に戻ったときの小球の速さは、単振動の対称性より、このvです。但し、を通過した後の振動中心は、ではなく、()であって、振動中心での速さはvよりも大きく、はじめてを通過して再度に戻ってくるまでの単振動の振幅はの単振動の振幅よりも大きくなります。再度に戻った後は、粒子Aと粒子Bの電気量がに戻るので、小球は、のときと同じ単振動に戻り、振動端のに到達して下降を始めます。こうなっているグラフは、() ......[]

V.2個の小球の単振動では、小球間の距離が一定なので、下側のばねが上下の小球に及ぼす弾性力の大きさ,及び、上下の小球間に働く静電気力(斥力です)の大きさは一定で、のときには、下側のバネが、上の小球に及ぼす弾性力は負、下の小球に及ぼす弾性力は正です。とおくと、上記の力は、上の小球に働く方が,下の小球に働く方がです。

9 以外に、上の小球が受ける力は、上のバネから受ける弾性力,重力,粒子A,粒子Bから受ける静電気力,加速度をとして、上の小球の運動方程式は、問5の結果を用いると、


 (が定数であることに注意)
上の小球の運動は、@と同じく、角振動数の単振動です。小球の振動周期は、 ......[]

10 下の小球が受ける力は,及び、重力,粒子A,粒子Bから受ける静電気力(4の状況ではであることに注意),加速度をとして、下の小球の運動方程式は、

 (が定数であることに注意)
下の小球の運動は、角振動数の単振動です。上下の小球は、小球間の距離を一定に保つ単振動を行うので、角振動数は一致しです。即ち、問5の結果を用いて、
......[]



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なお、解答は、
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