阪大物理'26年前期[3]
以下のAとBの両方の問題に解答せよ。なおAとBは独立した内容の問題である。
A.1モルの単原子分子理想気体(以下、気体と呼ぶ)の状態を、図1の圧力(p)-体積(V)グラフに示すようにA→B→C→Aの順にゆっくりと変化させた。A→Bは体積
で一定の定積変化、B→Cは体積
,圧力
の状態Bから体積
,圧力
の状態Cへの圧力-体積グラフ上での直線的な変化、C→Aは圧力
で一定の定圧変化である。ここで、αは定数であり、
とする。気体定数を Rとする。
問1 状態A, B,Cにおける気体のそれぞれの絶対温度
,
,
を、
,
,α,Rのうち必要なものを用いてそれぞれ表せ。
問2 A→Bの状態変化により気体が吸収した熱量
と気体の内部エネルギーの変化
を、
,
,Rのうち必要なものを用いてそれぞれ表せ。
問3 図1の状態Bから状態Cにいたる変化の過程における気体の絶対温度Tを、気体の体積Vを用いて表すと、
( (a) )×
+( (b) )×Vとなる。 以上の空欄 (a) と (b) に入るべき適切な数式を、
,
,α,Rのうち必要なものを用いてそれぞれの解答欄に記入せよ。
また、この絶対温度と体積の関係から、状態Cの体積
のαが、ある値xより小さい場合、 状態Bから状態Cにいたる変化の過程で、つねに気体の絶対温度は低下する。逆にαがxより大きい場合、気体の絶対温度は上昇したのち低下する。このxの値を求めよ。
問4 気体が断熱変化する場合には、図2の圧力(p)-体積(V)グラフにおける断熱変化を示す曲線(以下、断熱曲線とよぶ)に沿って気体の状態は変化する。この曲線上にある圧力
,体積
の状態Xにおける断熱曲線の接線の傾き
は
と求められる。ここで、図2の破線四角内に示される状態 X付近の拡大図のように、体積膨張により微小体積
(
)だけ異なり、ある圧力
をもつ状態Yへ、状態Xから直線的に変化する場合を考える。
が限りなく0に近いとき、この 2つの状態間を結ぶ線分XYの傾き
が、
の場合には気体は熱を吸収し、
の場合には気体は熱を放出する。
この関係をふまえると、図1の状態Bから状態Cにいたる変化の過程において、つねに気体が熱を吸収しながら状態変化するためには、状態Cの体積
のαがある値yより大きい必要がある。逆に、αがyより小さい場合、変化の過程で熱の放出を伴う。このyの値を求めよ。
問5 状態Cの体積を
とした場合、B→Cの状態変化で気体が吸収した熱量
を、
,
,Rのうち必要なものを用いて表し、図1のA→B→C→Aのサイクルで動作する熱機関の熱効率eの値を求めよ。
B.絶対屈折率(屈折率)がn (
)で一定とみなせるガラスを用いて作ったレンズについて考える。
T.図1にあるように、このレンズは、半径Rの球状のガラスを、その中心Cを通る直線lに垂直な平面で切ったのち、直線lからの距離がある値以上の部分を切り落としたものである。直線lはレンズの光軸となる。真空中において、図1のように、レンズの平らな面側から光軸に平行な光が入射し、レンズの曲がった面上の点Aで屈折して光軸上の点Fに到達した。 いま、屈折光を表す直線AFと光軸とのなす角を
(
),光軸と直線ACのなす角を
(
),点Aを通り光軸と垂直に交わる直線と光軸との交点をBとおく。
問6 以下の (a) 〜 (f) に入るべき適切な式を答えよ。
屈折の法則より, 屈折率nは、
,
を用いて
(a) と表される。AB間の距離
を、R,
を用いて表すと
(b) となる。また
は、FB間の距離
,
を用いて
(c) とも表される。これらの結果を組み合わせると、R,
,
を用いて
(d) ,
(e) となる。したがって屈折率nは、
,R,
を用いて
(f) と表される。
以降では、レンズの厚さはRに比べて十分に小さい(レンズが十分に薄い)ものとする。このとき
,
は十分に小さい。
が十分に小さいとき
,
,
と近似できることを用いて、 が示せる。この結果より
,
が十分に小さいときには、光軸に平行に入射した光は屈折点Aの位置によらず同一の焦点Fに集まる。またレンズが十分に薄いときには、
はレンズの焦点距離fとみなせるので、 が成り立つ。
U.次に、絶対屈折率(屈折率)
(
)の液体中において、T.で議論した十分に薄いレンズをつかって物体を観察する。図2にあるように、レンズ内部の光軸上のある点をOとおく。光軸にそって点Oから距離a (
)だけ離れたところに長さhの物体を光軸に垂直に置く。レンズを通る光は、レンズの平らな面と曲がった面でそれぞれ屈折しうるが、レンズが十分に薄いとして、図2の点Oを含む光軸に垂直な面のみで1回屈折するように簡略化して考えることとする。点Oを通る光は角度を変えずまっすぐ通り抜けるとみなしてよい。点Oと焦点の間の距離を焦点距離とみなしてよい。
問7 液体中でのレンズの焦点距離
を、n,
,Rを用いて表せ。
問8
のとき、図2のようにレンズを通して虚像が見えた。この虚像の長さ
を、h,
,aを用いて表せ。
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解答 Aは、直線的変化の途中で温度最大、熱の吸収排出の限界点を考える問題です。Bは、レンズの問題です。どちらも、原理的に考察する内容になっています。
A.問1 状態Aにおける状態方程式:
∴
......[答] 状態Bにおける状態方程式:
∴
......[答]状態Cにおける状態方程式:
∴
......[答]
......[答]
問3 図1の圧力(p)-体積(V)グラフにおいて、直線BCの傾きは、
B→Cの過程における圧力p,体積をVとします。点
を通る直線として、直線BCは(直線の方程式を参照)、 B→Cの過程における温度をTとして、状態方程式:
∴
よって、
......[(a)],
......[(b)] これより、
において温度は上昇し、
において温度は下降します(2次関数の最大・最小を参照)。B→Cの過程では、
の範囲で体積変化するので、つねに温度低下するとき(この範囲で2次関数Tがつねに減少であるために)、
です。即ち、
∴
また、
のとき、
が
の範囲に入るので、気体の温度は上昇したのち低下します。よって、
......[答]
問4 問3より、図1の直線BCの傾きは
です。状態X
における断熱曲線の接線の傾きは
です。つねに気体が熱を吸収しながら状態変化するためには、B→Cの過程(
)において、つねに、
が成り立ちます。
のときには、
にもなり得るので、変化の過程で気体が熱の放出を伴うことがあり得ます。よって、
......[答]Vで微分すると、
∴
よって、単原子分子理想気体において
(比熱比)より、状態X
における断熱曲線における接線の傾きは
です。
問5 図1の三角形ABCの面積を考えて、気体がA→B→C→Aのサイクルで気体がした正味の仕事Wは、
として、 問2の結果より、A→Bの過程で気体が吸収した熱は、
です。B→Cの過程で気体がした仕事
は、辺BCとV軸に挟まれた台形の面積を考えて、 B→Cの過程で気体の内部エネルギーの変化
は、 C→Aの過程は、定圧変化で温度が低下するので、気体が吸収した熱は負(気体は熱を放出)です。A→B→C→Aのサイクルで動作する熱機関の熱効率eは、
......[答]
B.T.問6 右図より入射角は
,屈折角は
です。真空の屈折率を1として、屈折の法則より、
∴
......[(a)]右図三角形ABCより、
......[(b)]右図三角形ABFより、
......[(c)]
(b),(c)より、
,
......[(d)]
......[(e)](d),(e)より、
(a)より、
......[(f)]
,
と近似すると、
と近似すると、となります。
とすると、
・・・@
が成り立ちます。
U.問7 問6(a)の屈折の法則において、
とすればよく、@において
,
とすることにより、
......[答]
問8 右図で、F,H,Kは光軸上にあり、Fをレンズの焦点、物体をDH,FAの延長とODの延長の交点をEとすると、虚像はEKです(DH,EKは光軸に垂直)。
・・・Aですが、△ODH∽△OEKより、
・・・B
Aと、△FOA∽△FKEより、
またBより、
,
より、 注.
とすると、B,Cより、
これより、
,
となりレンズの公式が導けます。レンズと虚像の距離なので、bにマイナスがつきます。
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各問題の著作権は
出題大学に属します。なお、解答は、
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