東大物理'18年前期[1]
図1-1のように水平な床の上に質量Mの台がある。台の中央には柱があり、柱上部の点Pに質量mの小球を長さLの伸び縮みしない糸で吊るした振り子が取り付けられている。床に固定されたx軸をとり、点Oを原点、水平方向右向きを正の向きとする。小球と糸は、柱や床に接触することなくx軸を含む鉛直面内を運動するものとする。また、床と台の間に摩擦はなく、台は傾くことなくx軸方向に運動するものとする。以下の設問に答えよ。ただし、重力加速度の大きさを
とし、小球の大きさ、糸の質量、および空気抵抗は無視できるとする。
T 図1-1のように、振り子の糸がたるまないように小球を鉛直方向から角度
(
)の位置まで持ち上げ、台と小球が静止した状態から静かに手を放したところ、台と小球は振動しながら運動した。(1) 小球が最初に最下点を通過するときの、小球の速度のx成分を求めよ。
(2) ある時刻における台の速度のx成分をV,小球の速度のx成分をvとする。このとき、点Pから距離
だけ離れた糸上の点の速度のx成分を、V,v,
,Lを用いて表せ。 (3) 点Pからの距離が
の糸上の点Qは、x軸方向には運動しない。
を、M,m,Lを用いて表せ。 (4) 角度
が十分小さい場合の台と小球の運動を考える。この運動の周期
は、点Qから見た小球の運動を考察することで求めることができる。周期
を、M,m,
,Lを用いて表せ。ただし、
が十分に小さいため、点Qの鉛直方向の運動は無視できるとする。また、
が十分小さいときに成り立つ近似式、
を用いてよい。
U 時刻
で台と小球が静止し、振り子が鉛直下向きを向いている。このとき、小球は床からの高さhの位置にある。この状態から図1-2のように、時刻
で台が加速度a (
)でx軸の正の向きに等加速度運動するように、台に力
を加え続けた。その結果、時刻
で、小球の高さがはじめて最大となった。(1) 時刻
での小球の高さを、L,h,
,aを用いて表せ。
(3) 台に加えた力
のグラフとして最も適切なものを、図1-3のア〜カから一つ選んで答えよ。(4) 時刻
で、台に力を加えるのを止めたところ、台と小球はその後も運動を続けた。時刻
における糸上の点Qの速度のx成分を求めよ。また、aが
に比べて十分に小さいとき、時刻
における点Qから見た小球の振動の周期
を、M,m,
,Lを用いて表せ。ただし、
が十分小さいときに成り立つ近似式、
を用いてよい。
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解答 問題文に「伸び縮みしない糸」とあるので、運動が行われている間、糸はたわむことなく直線を維持する、として考えます。本問ではUで床から見て力学的エネルギー保存の式を立てられず悩みます。
T(1) 小球が最下点を通過するときの小球、台の速度のx成分をv,Vとします。小球と台からなる系における、小球を放したときと小球が最下点を通過するときとのx方向の運動量保存より、
・・・@小球を放したとき、最下点より
だけ高い位置にあります。小球を放したときと小球が最下点を通過するときとの力学的エネルギー保存より、
・・・A@より、
・・・B
Aへ代入すると、 ∴
......[答]
(2) 点Pから距離
だけ離れた糸上の点
,小球、の台上で見た速度のx成分を
,
とします。糸が直線を維持すると考え、右図より三角形の相似比を考えて、床から見た、点
,小球、台の速度のx成分をu,v,Vとすると、点
と小球の台上で見た相対速度は、
,
よって、Bを用いて、
......[答]注.点Qは、長さLの糸をP側からm:Mに内分する点で、糸の両端に質量M,mの物体が位置する(P側にM)としたときの重心です。
(4) 点Qと小球との距離は、
です。糸と鉛直方向とのなす角をθとすると、小球に働く重力の運動方向に垂直な成分f の大きさは、
です。点Qから見て、小球のx方向の変位xは、
(一般角を参照)であり、
です。点Qの鉛直方向の運動を無視して、
のとき
より、小球の運動方程式は、小球の加速度をaとして、 この運動は、単振動です。その角振動数をωとすると、公式:
より、 よって、この運動の周期
は、
......[答]
U(1) 小球の高さが最大になったとき、つまり
において、台上で見て糸と鉛直方向のなす角がθだった(床から見てもθです)とします。小球の高さが最大になったとき、小球は台に対して静止しており、台上で見て、
から
までの間に、小球は水平方向に
変位しています。台上で見た力学的エネルギー保存を考えます。
においても
においても運動エネルギーは0で、X軸負方向の慣性力
のした仕事
によって、小球の位置エネルギー
が発生したと考えると、
・・・Cここで、
なので、
ということはなく、
という解が存在する(
,即ち
のときにもCは成立します)ことに注意してください。両辺を2乗して、
(
)は、
の状態なので、
・・・D
という条件が付いているので、
です。
における小球の高さは、小球は高さhの最下点から
だけ高い位置にあるので、
……[答] 注.床から見て、台+小球の運動方程式を
・・・Eとするのは誤りです。台は、
から
までに
進むのですが、小球は
しか進みません。問題文より、台の加速度はaですが、小球の加速度はaよりも小さいのです。
糸の張力をTとして、台の運動方程式は、
ですが、小球のx方向の加速度をbとして、小球のx方向の運動方程式は、
です。両式を辺々加えても、
(
)となりEになりません。その意味で問題文は力を
と書いていて、
は一定ですが、力
は一定ではありません。
上記では、台上で慣性力のした仕事を考えて解答しましたが、床上で力学的エネルギー保存を考えようとすると、小球の速度の接線方向成分をvとして、小球の接線方向の運動方程式は、
,法線方向の運動方程式は
となるのですが、これの解が時刻t の関数として、
,
,
という形にうまく表せないことが知られています。台の速度
も力
もt の関数としてうまく表せません。(3)で
のグラフを選ばせるのもそのためです。力
のした仕事Wを、
という形で計算することができないので、床上で力学的エネルギー保存を考えて解答することができません。そこで、上記では、台上で見て、
が出てこない形で力学的エネルギー保存を考えて解答しました。上記のように、加速度運動する物体上(非慣性系)においても、慣性力のする仕事を含めて力学的エネルギー保存を考えることができます。以下のリンク先で、いくつかの例で調べてみます。非慣性系におけるエネルギー保存を参照してください。
(2)
における小球の位置を小球の位置エネルギーの基準とすれば、
において床から見た力学的エネルギーは0です。
において床から見た台と小球の速度は
で一致します。
における小球の位置エネルギーは、(1)の結果より、
なので、
と
との間の力学的エネルギー保存より、力
がした仕事Wは、
における台と物体の運動エネルギー、物体の位置エネルギーの和に等しく、
......[答]
(3) 床から見て、糸の張力をTとして、台の運動方程式は、
・・・Fですが、小球のx方向の加速度を
として、小球のx方向の運動方程式は、
・・・GF+Gより、
台上で見て、小球の速さをvとして、小球の糸の方向の運動方程式は、
・・・H
において、
なのでGより
であり、
です。よって、ア,イ,ウのどれかです。時刻
で、小球の高さがはじめて最大となったとき、Dより
ですが、


より、
において、台上で見て
となるので、Hより、

このとき、Gより、
(∵
)よって、
こうなっているグラフは、イ ......[答]
(4) T(3)の注.で書いたように、点Qは糸の両端に質量M,mの物体が位置するとしたときの重心です。時刻
において、(2)で書いたように、小球も台も速度は
なので、Qの速度のx成分をuとして重心Qに質量
があると考え、運動量保存より、
∴
......[答]
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